山に咲く桜
山に咲く桜は少し地味
吉野の桜や千鳥ヶ淵の桜のように多くの人の目に触れることもない
しかしその姿は生命の輝きに満ち
たくさんの役立ちを果たしている
春には花を開いて、鳥の恋を演出し、虫たちには甘い蜜を与える
初夏には実をなし、腹を空かせた動物たちを満たす
暑い夏には枝一杯に葉を広げ、通りがかる人を日差しから守る
秋には色づき、山の紅葉の助けとなる
冬には、再び巡りくる役立ちのためにじっと寒さを耐え忍ぶ
たとえ寿命が尽きたとしても
その身は薪となって温もりや芳醇な香りを作り出し
その切り株は人々や動物たちの休息の場となる
でも山の桜は何も言わない
自慢もしなけりゃ文句も言わない
ただ己が生命を淡々と全うしているだけ
それなのになんという大きな役立ちを果たしていることだろう
あなたはあなたのままでいるだけで
生き様の手本を見せてくれている
あぁ、あなたに少しでも近づきたい…